「実験医学」2010年3月号・4月号の2回にわたって掲載した特別記事「ポスドク座談会」について,誌面では収録しきれなかったアンケート集計結果(Online Supplement Material)を,記事の抜粋とあわせてご紹介いたします.
本座談会は,2009年7月に米国セントルイスのWashington University in St. Louis(WashU), School of Medicine構内で開催されました.WashUで研究を進めている8名のポスドクに出席いただき,2時間半にわたって活発なディスカッションをしていただきました.その模様を編集・再構成し,「実験医学」2010年3月号・4月号に掲載した記事のなかから,今回は一部を抜粋してご紹介します.(編集部)
成功した研究者が話す留学時の逸話など,よく耳にすることがあります.研究留学は語学,研究面だけではなく,多くの人生経験,未知の世界観を教えてくれます.一流研究者のキャリアにおいて,研究留学は重要な1ステップです.しかしながら,研究留学には沢山の課題があります.給与や留学資金の出所,受け入れ先との交渉,海外生活のセットアップ,そしてやはり言葉の壁.一方で研究留学はキャリアとしてだけではなく,本人と同行家族にとって人生の大きな転換期になるでしょう.しかし留学経験者達の言葉に耳を傾けてみると,思っていたよりもやってみたら簡単だったとか,こんな解決策があったとか,そんな話が出てきます.
この座談会では,ここワシントン大学(WashU)で研究中の日本人ポスドク8人に集まっていただき,研究留学に関するさまざまな話を,辛かったり悩んだり嬉しかったりといった感情的な部分も含めてうかがいました.(司会進行・森本 充)
森本 留学するに当たって一番不安だったことや,これだけはやっておいた方がよかったと思うことはありますか?
今回の座談会メンバー
後方列左から森本 充,吉野 純,藤本 啓,兼清貴之,櫻井啓輔,前方列左から佐藤千尋,香山雅子,佐藤亜希子
兼清 英語の勉強をしておけばよかったな,と思います.こちらに来て思ったのが,英語が思った以上に上達しないということでした.来たらしゃべれるようになるかと思っていましたが,全くなんです.それでも,英語ができなくても実験できるということはわかったので,それはそれでよかったのですが.大学院から留学するのがベストですね.
吉野 僕も同じで,語学ですね.留学する前も不安で,来てからもずっと不安で,今も不安が続いています.思った以上に上達していないので苦しんでいますね.留学するのは僕の意見としては,ポスドクからの方がよいと思います.一通り大学院で色々なことを学んでから来た方がよいのではないかな,と.
藤本 語学力は,本当に想像以上に英語が進歩しないですね.それから,留学する前にとにかく下調べをたくさんした方がいいと思います.まず留学前に一度,ラボに見学に来るべきでした.僕の場合,ラボに来てみたらポスドクが僕一人だけで,ボスは内科のチェアマンをやっている忙しい先生でしたので,ディスカッションするのはメールか週末という状況です.これは研究環境としてはあまりよくないかな,と個人的に思います.
★本誌では他にも次のような内容について議論いただいています.
WashUポスドクの先生方の研究・留学・生活・将来についての考え方が一目でわかる,気になるアンケートの結果はこちらからご覧いただけます
↓WashUでの特別インタビューの動画をPodcast配信中!↓
↓ボストンでのポスドク座談会(2011年4,5月号掲載)はこちらをご覧ください↓