昨今の状況下,私ども羊土社は,皆さまのお役に立ちたいという思いから,ささやかではありますが弊社書籍の一部を無料公開することにいたしました.研究者・大学院生の方はもちろん,研究者を志す学部生の方にもご覧いただけるとたいへん嬉しく存じます.皆さまのご活動の一助になりましたら幸いです.
平日の勤務時間に加え,学生や教職員たちがキャンパスからすっかりいなくなった時間や週末にも仕事をしている,知識も経験も豊かな大勢の研究者たちが,あることを先送りにしては苦しみ,長年費やした時間を無駄にし,何百万ドルもの研究費を失うようなミスを犯している.一般的な北米の医学・生物学分野の研究者は,大学での教育に加え,レジデント(研修医)やフェロー(研究員),ポスドクとしておよそ15年もの月日をトレーニングに費やしている.… 続きを読む
平日の勤務時間に加え,学生や教職員たちがキャンパスからすっかりいなくなった時間や週末にも仕事をしている,知識も経験も豊かな大勢の研究者たちが,あることを先送りにしては苦しみ,長年費やした時間を無駄にし,何百万ドルもの研究費を失うようなミスを犯している.一般的な北米の医学・生物学分野の研究者は,大学での教育に加え,レジデント(研修医)やフェロー(研究員),ポスドクとしておよそ15年もの月日をトレーニングに費やしている.…
英作文のプロと研究のプロが, 心理学と神経科学に基づいた,成功の可能性を高める書き方を伝授.プライミング効果,初頭効果,新近効果,フレーミング効果などを駆使した,読み手の心をつかむメソッドが身につく!
「自著の参考にもできそうだな」と本書を読んで思った.本書の中心となるのは,論文や申請書を読む側の心理的・神経学的な反応をよく洞察して書くためのテクニックだ.
私自身は自著で「この方がよい」と経験的・感覚的にマスターしてきたことを指導してきた.例えば「何が大切なのかしっかりと書く」とか「重要なことは最初の方に書いておく」「締めの言葉を書く」などだ.今回,この本にはこれらのことが,理論的な裏付けをもって書かれているので,今後はより自信をもって指導することができそうだ.
この本では日本語の本にはない(ほぼないと思う)項目として「メンター」を作る重要性を詳しく書いてくれている.メンターの重要性は,精神的なサポートや研究キャリアの形成だけでなく,業績や論文のアクセプトまで,多岐にわたる.考えてみれば当然なのだが,その重要性がしっかりと書かれているのは,やはり米国の本ならではだと思う.また「大衆とのコミュニケーション」の部分にも十分なスペースが割かれているのも,日本の本ではみたことがない.さっそく近未来に論文がアクセプトされたら,本書をよく読んでプレスリリースに活かそうと思う.
本書にはふんだんにコラムが挿入されているが,このコラムが面白いだけでなく,ライティングの際のちょっとしたコツなどがあって役に立つ.傑作なのは「チームメンバーのタイプを見極める」だろう.「知的な賛同者」「コントロール・フリーク」「馬車馬」「タダ乗り」「支配的な委任者」などの特徴と対処の仕方が書かれている.思わず「いるいる」とうなずいてしまう.
あえて気になることをあげると,本書はほぼ文章ばかりで分量もかなりあるので読むのがけっこう大変だ.その点は忙しくて時間のない研究者を考慮してほしかった.
「文章は一つの芸術である」
文章を書くのは大変な作業だ.文章が書けなくて悩める研究者には手元に置いておいて損はないと思う.
『科研費獲得の方法とコツ』『科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック』著者児島将康(久留米大学分子生命科学研究所)
研究者が成功するためには良い文章を書くことが極めて重要です.研究の良さをしっかりと伝えられなければ,論文も通らないし,研究費も獲得できません.また,これらを英語で書くことも求められます.成功する文章を書くには,対象を意識した内容と構成はもちろん,さらに読みやすくないといけません.これには文章術も含めて,英文技法も正しく知らないと,良い文章にはなりません.
しかし,多くの研究者はその方法を体系的に学ぶ機会をなかなか得られません.実際の書類を作りながら,先輩に怒られながら,学んでいる人がほとんどです。その結果,上手くいかずに悩んでいる人も多いかと思います.まさに,この本はそのような方にお勧めです.
タイトルだけ見ると,英語の勉強本かなと思うかも知れません.しかし,内容は「研究者の文章術+英文技法」で,英語で書く機会が少ない人でも勉強になる内容です.論文・研究費申請・一般向け広報作成のために,研究者が知っておくべき文章術を丁寧に網羅しています.英文技法の部分も大変に分かりやすく,重要点が簡潔にまとまっています.忙しい査読者がパッと読んだだけで,研究の魅力を理解してもらうには,これらの英文技法は押さえておくべきだと思います.
私も英文の文章を書くことには苦しんできました.渡米後にエモリー大学で,同様の「文章術+英文技法」の授業を受講して,初めて体系的に学びました.そのときは,本当に目からウロコがボコッと落ちました.皆さんは同じ経験をこの本でできるのではと思います.10年前にこの本を出してくれていたら,私ももっと苦労しなかったのではと,羊土社をちょっと恨んでいます(笑).ぜひ,多くの方に手に取ってもらい,文章への苦手意識を克服してもらいたいと思います.
大須賀覚(アラバマ大学バーミンガム校)
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