Gノート 2015年10月号 Vol.2 No.5

できていますか?非がん疾患の緩和ケア

Case Studyから考える、あなたの患者さんに必要なケア

  • 浜野 淳/編
  • 2015年10月01日発行
  • B5判
  • 172ページ
  • ISBN 978-4-7581-2309-9
  • 2,750(本体2,500円+税)
  • 在庫:なし
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特集にあたって(一部抜粋)

●総合診療医 × 非がん疾患の緩和ケア = 次世代のケアモデル

(前略)

諸外国をはじめ,日本でも“緩和ケア=がん”というイメージが強く,非がん疾患の緩和ケアはあまり注目されてきませんでした.しかし,2014年度の日本の死亡統計によるとがんによる死亡は全体の28.9%であり,70%以上ががん以外で亡くなっていることがわかります.

(中略)

非がん疾患において,緩和ケアが普及していない理由としては,予後予測が難しいこと,例え苦痛や症状があっても,どのような介入・ケアが有効であるか明確なエビデンスがないことなどが考えられます.そして,諸外国の研究では,総合診療医は緩和ケアを提供する際に「先を見越したコミュニケーションをするタイミングがわからない」,「緩和ケアニーズを評価する知識,技術がない」と感じていることが明らかになっています.これらの研究結果から,非がん患者においては,緩和ケアの必要性が認識されにくく,また,認識されていても具体的なアクションに移せない現状が想像されます.

このようななか,非がん疾患の緩和ケアにおいて重要な役割を果たしている総合診療医からは,「非がん患者への緩和ケアを実践しているつもりだけど,本当にこれでよいのか?」,「もっとよい対応やケアはないのか?」という声を聞くことが増えてきました.

そこで,本特集では,非がん疾患の緩和ケアに関する総論的なことに加えて,第一線で活躍されている先生方に総合診療の現場で困っていること,意外と知られていないことなどをさまざまな事例に基づいて解説していただきました.非がん疾患の緩和ケアにかかわる総合診療医に知っておいてほしい緩和ケアの導入について説明し,日常診療でよくある認知症やCOPD,そして慢性心不全のケースや,在宅の現場で必ず遭遇する神経難病のケースに活用できるTipsなどを多く盛り込みました.明日から役立つ「現場力」を高めていただけることを期待しています.

がんだけじゃない!認知症やCOPD,肝硬変など非がん患者さんにも必要な緩和ケア.いつ介入すべきか?QOLを改善できるか?患者・家族の気持ちに寄りそうには?ケースごとの最適なケアを考えるために必携の1冊

目次

特集

できていますか?非がん疾患の緩和ケア
Case Studyから考える、あなたの患者さんに必要なケア
編集/浜野 淳(筑波大学 医学医療系)
特集にあたって ~なぜ非がん疾患の緩和ケアなのか?【浜野 淳】
緩和ケアの導入を考えるとき【大石 愛】
緩和ケアの必要性をどう伝えていくか?~日常生活に問題がないと感じている患者さん・家族も含めて【津田修治】
Case Study
①認知症 〜オシドリ夫婦の夫の症状が進んできたケース【小宮山 学】
②慢性呼吸不全 〜仕事を続けたいがタバコを止められない患者のケース【石丸直人】
③慢性心不全 〜病診連携により在宅看取りの希望を実現できた患者のケース【大石醒悟】
④パーキンソン病 〜家族が献身的な介護をしつつも負担を感じている患者のケース【今永光彦】
⑤脳梗塞後〜サルコペニアが進み,摂食嚥下リハを開始した患者のケース【若林秀隆】
⑥筋萎縮性側索硬化症(ALS)〜母としての役割を全うしたい患者のケース【荻野美恵子】
⑦末期腎不全〜透析導入の適応があるが,導入を希望しない患者のケース【山下明野,吉澤瑛子,岡田唯男】
⑧肝硬変 〜娘に介護の協力を頼めず,妻が不安を訴える患者のケース【高柳 亮】

寄稿

総合診療への期待
ともに「ほとんど在宅,たま〜に病院」の地域づくりをめざしたい【秋山正子】

連載

どうなる日本!? こうなる医療!!
医療・介護総合確保推進法成立後のさらなる改革の行方① 総合診療医と薬剤師のコラボで医療はどう変わるか?【宮田俊男】
医師として知っておくべき 介護・福祉のイロハ 〜実践・連携編
第10回 訪問歯科でできること ~知っているようで知らない訪問歯科の診療内容とは?~【木森久人】
聞きたい! 知りたい! 薬の使い分け
第10回 炎症性腸疾患の治療薬:正しい知識と使い分け 〜総合診療でのIBDとのつきあい方とは?〜【野崎良一】
新連載 今こそ臨床研究をはじめよう! 忙しい臨床医のための研究実践のコツ
第1回 研究ってこんなにいいコト!【堤 円香,前野哲博】
誌上EBM 抄読会 診療に活かせる論文の読み方が身につきます!
第9回 左室駆出率が正常な心不全患者もスピロノラクトンを使用するべきか?【前田幸佑,南郷栄秀】
Common disease診療のための ガイドライン早わかり
第10回 インフルエンザ【菊地由花,河原章浩】
なるほど! 使える! 在宅医療のお役立ちワザ
第4回 在宅緩和ケアの強い味方! PCAポンプを使いこなそう【首藤真理子】
思い出のポートフォリオを紹介します
第10回 家族カンファレンス ~クリニカルジャズで織り成す新たな気づき〜【松本翔子,高橋賢史】
広げよう,学びの輪 勉強会へようこそ
書評・感想
  • 本特集号を手にして最初の感想は,「まさにこれだ,ありがたい」のひと言であった.本特集では,これまであまり焦点が当てられてこなかったにもかかわらず,実は臨床の現場で多くの総合診療医がその対応に難渋していた非がん疾患の緩和ケアというテーマを,具体的ケースをあげて明解に解説してくれている.

    がん患者の緩和ケアに関する情報はかなり充実してきており,総合診療医のスキルは上がってきているように思う.しかしながら,総合診療医の特に外来診療ではがん疾患を抱えた患者さんよりも非がん疾患を抱えた虚弱高齢者の頻度の方が圧倒的に多い.そしてそのケアに難渋することが多い.それにもかかわらず,そのための適切なケアの方法を具体的に教えてくれるテキストはこれまでほとんど見当たらなかった.それを真正面から取り上げてくれたのが本特集号である.

    認知症が進み家族がその対応に苦慮して疲弊してきたとき,COPDを代表とする呼吸器疾患が進行し呼吸困難が強くなってきたとき,慢性心不全の急性増悪をくり返し徐々に消耗してきたとき,パーキンソン病の発症から10数年経ってADLが低下するとともに薬剤のさまざまな副作用に悩まされるとき,脳梗塞後に嚥下障害を合併し誤嚥性肺炎をくり返しながら徐々に衰弱していくとき,ALSの在宅診療を開始しついには人工呼吸器を導入しなければならなくなったとき,腎不全が進行し全身状態が悪化していくばかりの超高齢患者さんとその家族と向き合うとき,肝硬変が進行し腹水や脳症のコントロールが困難になってきたとき.これらのうちいずれかの状況にこれまで一度も遭遇したことのない総合診療医はおそらくいないだろう.

    このような状況にある患者さんの身体的苦痛をどのようにして和らげるかが重要なことはもちろんのことであるが,これから待ち受ける終末期についてどのように患者さんとその家族とコミュニケーションをとっていくのがよいのか,そして精神的苦痛をどのように和らげていくのがよいのだろうか.非がん患者さんの緩和ケアには,がん患者さんの緩和ケアと同様に,あるいはもしかするとそれよりもより多くの難しい課題があるかもしれない.われわれはこれまでその課題を見過ごしてきただけなのかもしれない.

    illness trajectory(病の軌跡)の3つのパターンを見据えて,その時々に合わせて適切に患者・家族を評価し,適切なコミュニケーションを含めた緩和ケアを提供する.本特集によって多くの総合診療医が非がん疾患を抱えた患者さんの緩和ケアに精通し,患者さんとその家族のさまざまな苦悩を和らげ,より豊かな人生を送ることができるよう支えていくことができるようになるのは間違いないであろう.

    宮田靖志(国立病院機構 名古屋医療センター 卒後教育研修センター/総合内科)

  • 「非がんの緩和ケアって大切なのはよくわかるけれど,実際のところ何をしたらいいの?」「非がん患者さんの終末期はよく診ているけれど,非がんとがんで緩和ケアってどう違うの? 日常のケアを見直してみたい!」そんな総合診療医や緩和ケア医の声にダイレクトに答える本が出たなぁというのが実感です.

    私は現在,緩和ケアを専門としておりますが,総合診療をバックグラウンドとしており,今までも,そしてこれからも,疾患を問わず緩和ケアを実践することを個人の,大学診療科の,そして研修医教育のモットーとしています.

    そもそも緩和ケアに必要な能力とは,「総合診療医としての能力+がん緩和ケアを専門的に実践する能力」であると言っても言い過ぎではないと思っています.がん緩和ケア医が総合診療を学べば,そして総合診療医ががん緩和ケアを学んだら鬼に金棒で,疾患を問わず生命の危機に瀕する患者・家族に対して必要な緩和ケアを提供することが可能です.特に,総合診療医が緩和ケアを学んでそれを提供することで,緩和ケアのニーズの大部分はカバーすることが可能です.これを緩和ケアの世界ではPrimary Palliative Careと呼んでいます.

    このように総合診療,家庭医療を志す医師にとって緩和ケアの能力は必要不可欠なものであり,この特集「できていますか? 非がん疾患の緩和ケア」はそのintroductionとして最適だと感じました.Common diseaseのよくある症例から,緩和ケアの大切な要素や疾患特異的な問題を考えられるように構成され,緩和ケアに興味をもち,実践している第一線の総合診療医が執筆を担当しています.緩和ケアを志す医師や看護師にとっても,がん緩和ケアとの共通点や違いを見つけながら楽しく学べる構成になっています.また,最初から通読しないで途中から拾い読みしても楽しむことができ,出張のお供にも最適だと感じました.

    前述の通り,本書は総合診療医,緩和ケアを志す医師・看護師が非がんの緩和ケアについて学びはじめるのにぴったりな1冊だと感じました.編集された筑波大学の浜野 淳 先生の見識と努力に感謝し最大の賛辞を送りたいと思います.

    木澤義之(神戸大学大学院 医学研究科内科系講座 先端医療緩和医療学分野 特命教授)

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  • 【本書名】Gノート:できていますか?非がん疾患の緩和ケア〜Case Studyから考える、あなたの患者さんに必要なケア
  • 【出版社名】羊土社

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第2地帯(ヨーロッパ) +2200円
第3地帯(アフリカ、南米) +2400円

※この表は本書のみご購入いただいた場合の費用をまとめたものです.他の書籍を同時に購入する場合はお申し込み金額や重量により費用が異なってまいりますのでご注意ください.

寄稿

内容見本

総合診療への期待

ともに「ほとんど在宅,たま~に病院」の地域づくりをめざしたい

【秋山正子】

連載

内容見本

どうなる日本!? こうなる医療!!

医療・介護総合確保推進法成立後のさらなる改革の行方① 総合診療医と薬剤師のコラボで医療はどう変わるか?

【宮田俊男】

内容見本

医師として知っておくべき 介護・福祉のイロハ 〜実践・連携編

第10回 訪問歯科でできること ~知っているようで知らない訪問歯科の診療内容とは?~

【木森久人】

内容見本

聞きたい! 知りたい! 薬の使い分け

第10回 炎症性腸疾患の治療薬:正しい知識と使い分け ~総合診療でのIBD とのつきあい方とは?~

【野崎良一】

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新連載 今こそ臨床研究をはじめよう! 忙しい臨床医のための研究実践のコツ

第1回 研究ってこんなにいいコト!

【堤 円香,前野哲博】

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誌上EBM 抄読会 診療に活かせる論文の読み方が身につきます!

第9回 左室駆出率が正常な心不全患者もスピロノラクトンを使用するべきか?

【前田幸佑,南郷栄秀】

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Common disease診療のための ガイドライン早わかり

第10回 インフルエンザ

【菊地由花,河原章浩】

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なるほど! 使える! 在宅医療のお役立ちワザ

第4回 在宅緩和ケアの強い味方! PCAポンプを使いこなそう

【首藤真理子】

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