本コンテンツについて
留学,学会発表,外国人研究者との共同研究…様々なシーンで重要性の高まる英語.月刊「実験医学」誌連載“誌上留学―ラボ英会話のKEY POINTS”では,日本人研究者が知っておきたい伝わるトークの秘訣を,ケーススタディー形式でご紹介しています.
本サイトでは,連載誌面に掲載された英語の「発音」をネイティブの音声・動画で視聴いただけます.「この単語って,こういう発音だったの?!」など,きっと発見があるはず.また,Script全文の対訳もご覧いただけますので,辞書も必要ありません.
Script11「準備万端マイクロアレイ―希望を語る」
【1】全文のネイティブ音声
【2】全文の対訳
クリスティーンは,彼女が興味をもって研究を進めている遺伝子ERAPについて,興味深いデータをたくさん得た.クリスティーンはERAPがERストレス誘導性細胞死にかかわることを見出したが,そのメカニズムはあまりはっきりしていない.このメカニズムを研究するため,クリスティーンはERAPを過剰発現させ,発現が変動する遺伝子をDNAマイクロアレイを使って検出しようとしている.彼女はウラノ先生と会い,研究計画と進捗をアップデートする.
ウラノ先生こんにちはクリスティーン.どこへ行っていたんですか? 久しぶりですね!
クリスティーンこんにちはウラノ先生! 先生が出張中だったので最近うまく会えなかったんだと思います.実験は一休みしていませんよ!
ウラノ先生そうでしたか,お互い会えてよかったですね.DNAマイクロアレイ実験の進捗はいかがですか?
クリスティーンβ細胞株のINS-1 832/13で誘導型のERAP過剰発現系を構築しました.その細胞を2μg/mLのドキシサイクリンで48時間処理したところ,ERAPの十分な誘導がqRT-PCRでもイムノブロットでも見られました.
ウラノ先生ちょっとはっきりさせたいのですが,マイクロアレイ実験はどのように行うつもりですか?
クリスティーンERAPを誘導していないRNAサンプルを3つ,誘導したものを3つ送ろうと考えています.すでにこれらのサンプルは調製し,qRT-PCRによってERAPの発現を確認済みです.
ウラノ先生これまでにERAPの局在を解析したことはありますか?
クリスティーンはい,免疫染色で解析したことがあります.ERストレス下では,非ストレス状態の細胞に比べてERAPの核での染色が確かに増強します.
ウラノ先生まず思いつくこととして,ERAPに制御される既知の遺伝子があるかどうかは知っていますか?
クリスティーンERAPは転写上昇につながるヒストン修飾因子と相互作用する可能性がありますが,ERAPがどの遺伝子を制御しうるかについては,十分なデータはありません.
ウラノ先生DNAマイクロアレイ解析から得られた発現変動する遺伝子のリストを,どのように活用するつもりですか?
クリスティーン細胞の機能不全やアポトーシスにかかわる遺伝子の転写上昇や,細胞の生存にかかわる遺伝子の転写低下をスクリーニングするつもりです.それは,私の発見がERAPが細胞死につながることを示唆するからです.次に,それらの結果をqRT-PCRとイムノブロットで確かめたいと思います.最後のステップとしては,アポトーシス誘導性の遺伝子をノックダウンして,アポトーシスを解析するつもりです.できれば,細胞死の減弱を見てみたいと思います.また,細胞生存にかかわる遺伝子を過剰発現させてみて,それらの遺伝子がERストレス誘導性アポトーシスに防御的な機能を有するかどうか確認できればと思います.
ウラノ先生他にやってみる可能性がある実験はありますか?
クリスティーンERAPの転写における役割を確かめるため,いくつかの遺伝子のレポーターコンストラクトを用いてルシフェラーゼアッセイも行う予定です.さらに,ERAPのそれら遺伝子プロモーターへのリクルートを調べるため,ChIPアッセイもやってみようと思います.また,ERストレス下でERAPが核移行するメカニズムを調べ,ERAPは何らかの転写因子やヒストン修飾因子と結合するか明らかにしたいです.これがどうしてもやりたいことのリストです!
ウラノ先生それはよい計画ですね! DNAマイクロアレイの結果を見るのを楽しみにしていますよ.進捗は教えてくださいね.
クリスティーンありがとうございます,しっかりと逐次報告したいと思います.