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Script4「いざ,研究ディスカッション―聞かれた以上のことを答える」

クリスティーンは,小胞体ストレス(ER stress)下のβ細胞でアポトーシスに関する機能を担う「ERAP(endoplasmic reticulum apoptotic protein)」という新規遺伝子について,興味深いデータを得た.小胞体ストレスは,小胞体に入ってきたタンパク質が適切に処理されず,折り畳まれていない/異常に折り畳まれたタンパク質が蓄積した際に生じる,細胞内ストレスの一種である.クリスティーンは自分の発見についてディスカッションするため,ウラノ先生のオフィスで待ち合わせる.

【1】全文のネイティブ音声

 

【2】全文の対訳

クリスティーントーマス,こんにちは.いま実験結果についてお話する時間はありますか? もしよろしければ,いくつか先生と相談したいことがあるんです.

トーマス(ウラノ先生)やあクリスティーン.もちろん大歓迎です! あなたのEメールから考えるに,アポトーシスに関連する発見があったようですね.

クリスティーンいつもながら的を射ていますね.ご存知のとおり,私は小胞体ストレス下で細胞死をひき起こす遺伝子である可能性があるERAPを解析しています.回復不能な小胞体ストレスは,細胞死をひき起こす,CHOPのようなアポトーシス遺伝子の発現を誘導することが知られています.私の過去の観察では,ERAP発現をRNA・タンパク質レベルの両方で測定し,ERAP発現は小胞体ストレスによって上昇することを突き止めました.そこで今回,小胞体ストレスによってひき起こされる細胞死におけるERAPの役割を研究したいと考えました.ERAPをノックダウンしたところ,小胞体ストレス条件下でイムノブロットを行うと,細胞死のマーカーであるcleaved caspase-3が検出できなくなったのです.私の考え方は正しいでしょうか?

トーマス少し話を戻しましょう.細胞にどのようにしてストレスをかけたのかな?

クリスティーンINS-1 832/13細胞を5 nMのthapsigarginで24時間処理しました.Thapsigarginは小胞体のカルシウムレベルを枯渇させる化学的小胞体ストレス誘導剤です.カルシウムは小胞体のタンパク質折り畳み酵素のいくつかにとって,その正常な機能に必要なので,ストレスをひき起こす訳です.

トーマス今のところ,あなたの考えに同感です。細胞を観察したとき,何か変化はありませんでしたか?

クリスティーン私の勘ですが,これら小胞体ストレス条件下ではINS-1 832/13細胞は死にかけているようです.小胞体ストレス条件下において,ERAPノックダウン細胞はコントロール細胞に比べ,浮遊した死細胞が少なかったのです.

トーマスまず,ERAPをノックダウンした手法について,もう少し詳しく教えてもらえますか?

クリスティーン細胞にはLipofectamine 2000で,コントロールsiRNAか,ERAPに対するsiRNAを導入しました.イムノブロットで測定し,2倍以上のERAPノックダウンを検出できました.またqRT-PCRでも確認しています.

トーマスあなたの発見に関連して,これからどうする予定ですか?

クリスティーン他の手法でアポトーシスを測定したいと思います.細胞をpropidium iodideで標識し,FACS解析で死細胞の染色を計測したいと思います.

トーマス素晴らしい考えを思いつきましたね! 査読者に発見を納得してもらうには,いつでも最低2つの手法でアポトーシスを測定しなければなりません.他に何か私と共有しておきたい考えはありますか? 今のところ,あなたはとてもうまくいっていますよ!

クリスティーン今のところ大丈夫です.先生のフィードバックとご協力に,感謝してもしきれないくらいです.

トーマスどういたしまして.当たり前のことをしただけですよ.

【3】発音のKEY POINTS「R」

 

誌上留学!ラボ英会話のKEY POINTS Web留学編 目次

プロフィール

浦野 文彦(Fumihiko Urano)
1994年,慶應義塾大学医学部卒業.慶應大学医学部病理学教室にて小児病理学,分子病理学を学ぶ(秦順一教授指導,元国立成育医療センター総長).’98年からNew York University School of Medicine分子病理部門研究員(David Ron教授,現University of Cambridge教授),2002年よりUniversity of Massachusetts Medical School助教授,’08年より准教授,’11年永久教授権獲得,2012年7月よりWashington University School of Medicine, Samuel E. Schechter冠教授就任.’11年,American Society for Clinical Investigation会員に推挙される.小胞体ストレスが,老化,糖尿病,神経変性疾患に与える役割を研究しています.また,小胞体ストレス病(Wolfram syndrome)の患者,家族を支えるためのクリニックを運営しています .興味のある方は次のサイトをご覧ください(to wwwhttp://www.erstress.com , to wwwhttp://fumihikourano.blogspot.com/ & to wwwhttps://wolframsyndrome.dom.wustl.edu/).
Christine Oslowski
2007年,マサチューセッツ大学を卒業し,同大学医学部医科学博士課程に入学.2012年,浦野教授の研究室で博士号を取得し,現在はボストン大学医学部でポスドクとして研究に,また教育に励んでいる.
Marjorie Whittaker
ボストン大学でSpeech-Language Pathologyの修士号を取得後,耳の聞こえない子供達の発音を矯正する仕事に従事.その後,外国人エンジニア,医師などの発音矯正の授業,コンサルティングを行う,The Whittaker Groupを設立する.2006年には,Lynda Katz Wilner先生とともに,ESL RULESを設立し,英語の発音に関するセミナーを主宰し,『RULES』,『Medically Speaking RULES』,『RULES BY THE SOUND』,『Medically Speaking Idioms』といった本の出版をしている.詳細は,to wwwhttp://www.eslrules.comto wwwhttp://www.prospeech.comまたはまで.
プロフィールは実験医学掲載当時のものになります.

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