2009年12月10日、第32回日本分子生物学会年会の若手教育ランチョンセミナーが開催され、多くの方に参加いただきました。本動画は、日本分子生物学会若手教育問題ワーキンググループの先生方のご講演(第1部)を「実験医学」編集部が収録し、配信しています。
協賛:株式会社 羊土社
ライフサイエンス分野で最大の学会の一つである日本分子生物学会では、科学的不正をなくすために若手教育からきちんと見直そうという視点から、2007年より若手教育問題ワーキンググループを設置し、メンバーには世界を相手に奮闘中の30~40歳代8名を集めた。現在まで3年間活動を行い、毎年の年会において「若手教育シンポジウム」を開催している。2007年および2008年のシンポジウムでは主に現状分析や精神論を中心に据えたのに対し、2009年のシンポジウムでは、大きく趣向を変えて知識的・技術的な側面から若手の教育を行うべく、4つの講演とパネルディスカッションを行った。
特に今回の試みは予想を遙かに超える大好評で、当日会場で行ったアンケートの結果では「今後このような活動を続けるべき」とした方が94.5%と驚異的な数字を記録した。これは主催者としては嬉しい限りであるが、その一方で開場1時間前にはすでに長蛇の列ができ、会場は立ち見で溢れて入場が困難で、それを見て入場を諦めた方も多数いらっしゃったことが心残りであった。そこでより多くの方にこのシンポジウムの内容を知っていただくため、その一部を協賛の羊土社のご協力で動画配信していただけることになった。
元々、個人の趣味的な意味合いが強かった科学は、近年急速に職業化すると共に不正の問題が後を絶たない。それは科学者の若手教育において「ルール」の明確な教育がなされていないことと、個々の研究室の“たこつぼ化”によって相互監視ができないことが一因となっている。
ルールが明確でないことは、過ちを生みやすい。そして、それを許容する土壌が醸成されかねない。さらに過ちを装った捏造も起こりうるだろう。また、ルールがないために、大多数の正しいサイエンティストすら、恐る恐る進んでいるようにも見える。特に研究を始めたばかりの若手サイエンティストに、どこまでがフェアでどこからがアンフェアなのかきちんと示すことは、正しいサイエンスのあり方の確立に重要であることは言うまでもない。
われわれの活動は、これらのルールを明確にするだけでなく、双方向的なディスカッションを行い、コンセンサスの形成につなげていこうとする全く新しいタイプの試みである。若手・中堅・シニアどの層からも広く意見を募り、活発な議論が展開され、それによって一層サイエンスの健全性が確保されることを願って止まない。
日本分子生物学会 若手教育問題ワーキンググループ
座長 中山敬一(九州大学生体防御医学研究所)
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