眠気覚ましに使われるカフェインの効き方には個人差があることは古くから知られています.初期の研究ではカフェイン感受性のある人とない人ではカフェインの薬物動態に違いがあると考えられていたのですが,一致した結論はみられず,個人差がどうして生じるのかはよくわかっていませんでした.
近年,カフェインは,直接,脳に対して覚醒物質として作用するのではなく,睡眠を促進するアデノシン受容体の阻害薬として作用し,覚醒作用を促すことがわかってきました.さらにアデノシン受容体に関する研究が進んできたことから,遺伝子の個人差であるSNP(スニップ)を利用してアデノシン受容体の遺伝子の個人差とカフェインの感受性や不眠との関連を調べた研究が報告されるようになってきました1).こうしたSNPによる研究では,やはり,アデノシン受容体遺伝子の個人差によってカフェインの感受性が異なり,その結果,不眠が生じる人とそうでない人が生じるようです.
ただし,カフェインに強くても,その摂取量が増えると,習慣性,中止時のリバウンドといった問題が生じますし,加齢に伴ってカフェインの代謝が悪くなり,若いときにはカフェインを飲んでも眠れていたのが,高齢になると不眠を生じることもあります.いくら,カフェインに強くても,不眠の方ではその代謝時間を考え,夕方以降のカフェイン摂取は控えるべきです.
小川朝生,谷口充孝/編
定価 3,500円+税, 2013年2月発行
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