成人では一般的に必要な睡眠時間は7~8時間と考えられています.しかしながら,睡眠時間には個人差があり,5時間の睡眠時間で十分な人もいれば,睡眠時間を10時間確保しないと,日中の活動に影響する場合もあります.また,睡眠時間は年齢によっても変化し,20歳代で7~8時間の睡眠時間であった人でも,加齢とともに睡眠時間が短くなり,高齢になると5~6時間の睡眠時間で済む場合もあります.
それでは自分に合った睡眠時間を見つける方法を考えてみましょう.2~3週間,一定の睡眠時間(例えば7時間)にしてみて,昼間に眠気が生じず日中の精神活動でも問題がなければ,それがその人にとって適切な睡眠時間です.まだ眠気があるようであれば,最初に設定した睡眠時間を延長し,入眠に時間がかかったり,朝早く起きるようであれば,睡眠時間を短く設定します.単純な方法ですが,日常生活のなかでは実際には難しいかもしれません.実践してもらうのが難しい原因の1つとして,睡眠時間を延長する提案をしても,まだ,効果が期待できない2~3日で効果なしと判断してしまい,長期に取り組んでもらえないことがあります.2~3週間の取り組みが難しければ,1週間でも試してもらいます.これまで6時間だった睡眠時間を7時間にすると日中の眠気が少なくなり,頭の働きもよくなることが多いはずです.なお,適切な睡眠をとるためには,睡眠時間だけでなく規則的な睡眠覚醒リズムも重要ですので,就寝・起床時刻も一定にします.
睡眠時間には個人差があり,睡眠時間が4~5時間で問題のない人もいます.平均5時間未満の睡眠の人をショートスリーパーと言いますが,ショートスリーパーと思い込んでいる人のなかには,本当は日中の精神活動に影響を生じていたり,居眠りをくり返しているのに,眠気に慣れが生じてしまい自分では眠気を自覚していないことも少なくありません.睡眠時間が短いことを自慢する人がいますが,睡眠に関しては自分の認識だけでなく,周囲に自分の状況を把握してもらい,眠気を指摘されたら,素直に睡眠時間を延長するべきです.
長い間,このコーナーをお読みいただきありがとうございました.睡眠医学は新しい医学分野です.このため,まだまだわかっていないことも多いのですが,睡眠が多くの疾患の回復や予防にかかわっていることは間違いありません.眠れなくて困っている患者に対する「睡眠マネージメント」は診療分野にかかわらず医師にとって必須のスキルです.コーナーを通して少しでも関心をもっていただければ幸いです.
小川朝生,谷口充孝/編
定価 3,500円+税, 2013年2月発行
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