漢方薬の副作用
レジデントノート2024年3月号 掲載
日常診療でよく出合う場面で漢方薬を選ぶ際の考え方,使い分けを解説します.本連載では利便性のため本文でツムラの製品番号を併記しています.生薬は黄下線,漢方薬は緑下線で示します.
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今回は漢方薬の副作用を取り上げてみようと思います.証が合えば,つまり漢方薬を正しく選べば副作用は出ない,という言説もたまに聞かれますが,私の立場としてはそうではありません1,2).もちろん将来的には,遺伝子多型や腸内細菌叢の解析結果と副作用の出現に関連が見出される可能性はありますが,古典的にいわれてきた証だけで副作用を完全に防ぐことは難しいでしょう.頻度はきわめて稀ではあるものの,常に注意する気持ちは必要です.
80歳代女性,定期通院の際,先週からの高血圧増悪とむくみの出現を訴えた.もともと高血圧にアムロジピン,脂質異常症にアトルバスタチンを内服している.2週間前に,腰痛とこむら返りを近医整形外科で相談したところ,芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう) 1日3包が開始となり,以来内服を継続している.
本症例はカンゾウ(甘草)による偽アルドステロン症が最も考えやすそうです.医師国家試験でも,漢方薬に関連する問題はこれまでにカンゾウによる偽アルドステロン症しか出たことがないといわれるくらいなので研修医の皆さんにもお馴染みなのではないかと思いますが,ここでは病態やリスク因子についてもご紹介させてください.
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