精神科の薬と漢方薬:不眠
レジデントノート2024年5月号 掲載
日常診療でよく出合う場面で漢方薬を選ぶ際の考え方,使い分けを解説します.本連載では利便性のため本文でツムラの製品番号を併記しています.生薬は黄下線,漢方薬は緑下線で示します.
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今回は54抑肝散(よくかんさん)を中心に,「なるべくベンゾジアゼピン系睡眠薬などの “精神科の薬” を減らしたい」というご希望と向き合ってみたいと思います.抑肝散がSSRI(selective serotonin reuptake inhibitor:選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やベンゾジアゼピン系睡眠薬と同じような薬理作用をもっているという解説もするのですが,「横のものを縦にする」という話ではないつもりです.患者さんがどうして “精神科の薬” を減らしたいと思っているのか,その気持ちにどのように向き合うのか,という点についても私見を述べてみたいと思います.
80歳代男性,不眠に対して50歳代のころから短時間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬を使用してきた.週刊誌の記事で,「医者から処方されても飲んではいけないクスリ」のリストのなかに自分の内服している睡眠薬の名前があったので心配になり,何度か睡眠薬の内服を中断してみたところ,全く眠れなかった.処方医からは「週刊誌の記事なんて気にしなくて大丈夫ですよ.お薬また出しておきますね」と言われて,それ以上話ができなかったので,予約外で曜日を変えて処方医ではない医師の外来を受診した.
患者さんが雑誌の記事を根拠に,自分の・もしくは別の医師の処方薬をやめたい,減らしたい,と言ってきた…想像するだけでも修羅場が不可避な展開ですが,ちょっと待ってください.これは,患者さんがどんなことを不安に思っているのかを知り,また改めて薬物治療に対する患者さんの理解を深める絶好のチャンスかもしれません.患者さんが持ってきた雑誌に共感や理解を示す必要はないかもしれませんが,患者さんの気持ちに対しては共感や理解を表現できるとよいですね.
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*公開日は変更となる可能性があります
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