書籍『科研費獲得の方法とコツ』(現在は第7版,発行:羊土社)では,科研費の申請が初めて,あるいは慣れていない研究者の皆さまへ向けて,科研費の概要・応募戦略の立て方・申請書の書き方などを解説しています.
ここでは,常に変更される科研費制度に関して,書籍からの更新点を著者の児島将康先生に随時ご紹介いただきます.ぜひ定期的にチェックしてください.
令和4年3月25日に,科研費の今後の変更点等について学術振興会HP上で通知があった.そのなかには次の5点の項目がある.
多くの応募予定者にとって関連があるのは,①と②の2点だ.
科研費の公募では,応募者が「審査区分表」から選択した区分において審査されるが,この「審査区分表」はおおむね5年ごとに見直しが行われることになっている.従来の「応募分野」が「審査区分」として再編成されたのは平成30(2018)年度からなので,令和5年度はその見直しの時期にあたり,令和4年3月に「審査区分表」が変更された.新しい「審査区分表」は令和5(2023)年度,つまり次回の科研費の応募から適応される.
改正のポイントは,
である.
1つめのポイント,小区分の「内容の例」に関しては,96の小区分で見直しが行われた.「内容の例」の検討では,「将来の大括り化を見据えて単語数を少なくすること(10個以下)」と「新しいものも包含できるようになるべく抽象的で広い範囲の言葉を用いること」が徹底されたとある.
見直しのあった「内容の例」を具体的にあげると,
などである.総じて微細な変更なので,応募への影響は少ないだろう.
注目すべきことは「将来の大括り化を見据えて」とあるように,将来的には区分の再編が行われてより少ない区分数になるということだ.自身の研究分野以外の審査委員も加わることになるので,異なる分野の審査委員にも理解してもらえるような申請書を作成することが,より必要になることだろう.
しかし,研究とは具体的な知の探求であるべきはずなのに,「なるべく抽象的で広い範囲の言葉を用いること」というのは,一体どういった意味なのか私には理解できない.
もう1つのポイント,「「基盤研究(B)」において,著しく応募件数の少ない一部の小区分について,複数の小区分での合同審査を実施すること」は,応募区分によっては大きな影響があるだろう.審査委員の合計は6〜12名の範囲内で,「仮に3区分以上が合同でも最大12名」であり,「当該区分に精通している審査委員を少なくとも3名程度は含める」とされている.合同審査は49小区分が対象であるが,医学生物学系の小区分で対象となるのは少なく,たとえば「遺伝学関連」と「進化生物学関連」で合同審査が実施される(審査の大括り化).(比較的に)近い研究分野の小区分が合同で審査を行うことになるので,申請書の内容を,よりわかりやすく記述することが必要だろう.
特別推進研究,基盤研究,若手研究,挑戦的研究の公募スケジュールは令和4年度公募と変更はないが,学術変革領域研究(A・B)の公募スケジュールと審査結果の通知時期が早くなる(表1,2).
学術変革領域研究(A・B)は,あと2カ月すると公募がはじまる.学術変革領域研究(A・B)に応募予定の研究者はすぐにでも準備をはじめるべきだろう
これらの3点については,多くの申請者にとって影響は少ない.変更点を見ておくだけでいいだろう.