本連載が大幅加筆して単行本『ハーバードでも通用した 研究者の英語術』になりました!
本連載の主旨・概要は「はじめに~ひとりで学ぶ英語の心得」をご覧下さい
メールの件名欄(Subject line)は論文ではタイトルにあたる部分です.タイトルのない論文を投稿する人がいないにもかかわらず,Subject lineが空欄であったり,「Re:」など無内容な場合や,「Hello」「Thank you」「Meeting」などあまりも漠然とした件名(Subject名)メールが多いことに驚かされます.Subject lineが空っぽのメールは受け取けとる側が,内容を推し量ることさえできないので,甚だ不親切で,不誠実です.また,スパム・メールと勘違いされてしまう可能性もあります.前回は言いたいことをまず最初に持ってくることの重要性を述べましたが,Subject名は受け取り手にメッセージを伝えることのできる最初のコミュニケーションの場なので,ここに最も伝えたいことのエッセンスを書くべきです.メッセージの肝を反映した短いフレーズをSubjectに使いましょう.また“件名は後から書くのが賢明”というダジャレがあるように,本文が完成したあとにその内容を踏まえてSubject名を書くのがよいでしょう.先に,Subject名を書いた場合には,本文が完成したのちにもう一度,見直してリバイスするようにしましょう.
優れた機能的なSubject名とは,相手がメールを開ける前に件名だけ見て要点がわかり,後からメールボックス内を検索した場合に見つけやすい工夫がなされたものです. Subject名を機能的にする工夫には次のようなものがあります.
1)具体的に:「Meeting」よりは「Meeting on the PDF project」,「PDF」よりは「PDF project」とより具体的に.あなたにとってはそのミーティングやプロジェクトが唯一そして最大の関心事でも,相手は多くの別のミーティングやプロジェクトを抱えている可能性にまで想像力をはたらかせましょう.
2)数字情報を:Meetingの日付がわかっているのならばSubject名にいれましょう.「Meeting on the PDF project」よりは「Meeting on the PDF project(Friday, July 10th)」の方がよいでしょう.また過去に同じような内容のメールを送っている場合には「Update on the PDF project #3」のように通し番号をつけるのもよし.
3)どんなアクションが必要なのか:メールは基本的には相手に何らかのアクションを要求するもの(Requesting)と,相手に何かを知ってもらうもの(Informing)があります.とくに前者の場合にはどのようなアクションを要求しているのかをSubject名に込めた方がよいでしょう.「Hela B7.1 cells」よりは「Request for Hela B7.1 cells」,「Meeting on Project X」よりは「Scheduling a meeting on Project X」,「Meeting on July 10th」よりは「Request to confirm the Meeting on July 10th」などと具体的なアクションが込められているものがよいでしょう.
プロフィール
Photo: Liza Green (Harvard Focus)