3月17日に学術振興会より「令和5(2023)年度の科研費応募の変更点等について」として,来年度(令和5年度4月〜)の変更点のまとめが発表され,そこには11項目の注意事項が記載されている.これまでの「速報」に書いてきた内容と重なるものが多いが,一番の重要なポイントは「1.公募スケジュールの変更について」だろう.今回のまとめで,具体的な公募開始予定日が発表された.以下,「令和5(2023)年度の科研費応募の変更点等について」の内容を順番に見ていこう.
令和6(2024)年度科研費公募スケジュールが(予定)として発表された.主な種目である基盤研究(A,B,C),若手研究,挑戦的研究(開拓・萌芽)は,令和5年7月14日に公募開始で,9月19日が公募締め切りである.そして審査結果は令和6年2月下旬に発表される.
注意すべきは特別推進研究,学術変革領域研究(A,B),基盤研究(S)では,令和5年4月13日から公募開始,6月19日に公募締め切りとなっており,応募期間がこれまでよりかなり早くなっている〔学術変革領域研究(A)の公募研究は7月14日公募開始,9月19日公募締め切り〕.つまり新年度がスタートすると,すぐに公募がはじまるということだ.応募予定の方はすぐにでも準備をはじめるべきだろう.
このように公募期間はだんだんと早くなってきたが,学術振興会のサイトには「以後当面の間,同様のスケジュールでの公募を予定しています」とあり,今後しばらくはこのスケジュールでの公募になるようだ.
研究種目名 | 公募開始 | 公募締切 | 審査結果通知 | 交付内定 |
---|---|---|---|---|
特別研究推進研究 | 令和5年4月13日 (令和4年7月1日) |
令和5年6月19日 (令和4年9月5日) |
令和6年1月上旬 (令和5年3月16日) |
令和6年4月上旬 (令和5年4月上旬) |
学術変革領域研究(A・B) | 令和5年4月13日 (令和4年5月23日) |
令和5年6月19日 (令和4年7月19日) |
令和6年2月下旬 (令和5年2月28日) |
令和6年4月上旬 (令和5年4月上旬) |
学術変革領域研究 (A)(公募研究) |
令和5年7月14日 (令和4年8月1日) |
令和5年9月19日 (令和4年10月5日) |
令和6年2月下旬 (令和5年2月28日) |
令和6年4月上旬 (令和5年4月上旬) |
基盤研究(S) | 令和5年4月13日 (令和4年7月1日) |
令和5年6月19日 (令和4年9月5日) |
令和6年2月中旬 (令和5年4月中旬) |
令和6年4月上旬 (令和5年4月中旬) |
基盤研究(A・B・C)、 若手研究、奨励研究 |
令和5年7月14日 (令和4年8月1日) (注:基盤Aのみ令和4年7月1日) |
令和5年9月19日 (令和4年10月5日) (注:基盤Aのみ令和4年9月5日) |
令和6年2月下旬 (令和5年2月28日) |
令和6年4月上旬 (令和5年4月上旬) |
挑戦的研究(開拓・萌芽) | 令和5年7月14日 (令和4年8月1日) |
令和5年9月19日 (令和4年10月5日) |
令和6年6月下旬 (令和5年6月下旬) |
令和6年6月下旬 (令和5年6月下旬) |
研究成果公開促進費 | 令和5年7月14日 (令和4年8月1日) |
令和5年9月19日 (令和4年10月5日) |
令和6年3月下旬 (令和5年3月下旬) |
令和6年4月上旬 (令和5年4月上旬) |
研究種目名 | 公募開始 | 公募締切 | 審査結果通知 | 交付内定 |
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海外連携研究 (旧国際共同研究強化(B)) |
令和5年3月1日 (令和4年4月1日) |
令和5年5月10日 (令和4年5月31日) |
令和5年9月上旬 (令和4年10月7日) |
令和5年9月上旬 (令和4年10月7日) |
国際共同研究強化(旧国際共同研究強化(A))、帰国発展研究 | 令和5年7月14日 (令和4年7月1日) |
令和5年9月19日 (令和4年9月5日) |
令和6年2月下旬 (国際A:令和5年1月31日) (帰国:令和5年2月17日) |
令和6年2月下旬 (国際A:令和5年1月31日) (帰国:令和5年2月17日) |
これまで審査委員が審査において使用するのは,日本学術振興会から送られてくる研究計画調書の冊子だった.冊子はモノクロ(グレースケール)で印刷されており,カラーの図や写真などはモノクロ印刷を前提として作製しなければならなかった.それが今回の公募からはカラーのPDFファイルを用いて行うことになった.ただし現時点で電子化・カラー化の対象となる研究種目は,
である.
具体的な審査方法について,まず従来の冊子体での審査はなくなる.審査委員は電子申請システム上で,応募課題の研究計画調書(PDFファイル)を閲覧して審査するか,あるいはパソコンやiPadなどのタブレットを用いて審査したり,もちろんPDFファイルを印刷して紙媒体でも審査できる.重要なことはシステム上のPDFファイルはカラーであることだ.令和5年度審査においても申請書はPDFファイルでもチェックできたが,カラーではなかった.それが今後はカラー化されるということだ.やはり図や写真などはカラーの方が理解しやすいし,色文字も使い方によっては非常に効果的だ.
基盤研究(A,B,C),若手研究,挑戦的研究などのその他の種目については,従前と同様にモノクロ印刷された研究計画調書の冊子によって審査を行い,今後の審査状況を踏まえ対象研究種目を拡大していく予定」とされている.電子化・カラー化される時期はまだ未定であるが,いずれすべての種目でそうなると思われる.
「引き戻し機能」とは,研究計画調書の提出(送信)期限(応募締め切り日時)より前であれば,いちど日本学術振興会に提出(送信)した研究計画調書(応募書類)を引き戻し,訂正や修正を行って再提出ができるということである.日本学術振興会への提出(送信)が,締め切りよりも早い研究機関の応募者が活用できると思う.「引き戻し」は研究者個人ではなく,研究機関の担当者によって行う.当然であるが,学振側の申請書の受付期間後の引き戻しや再提出は受け付けられない.あくまで応募期間内でということだ.
特別研究員奨励費が基金化されて,研究費の柔軟な使用が可能となる.また令和5(2023)年度以降,「特別研究員奨励費(特別研究員)」を基課題として,「国際共同研究強化〔旧:国際共同研究強化(A)〕」への応募が可能となる.
これまで特別研究員は研究分担者になれなかったが,受入研究機関として日本学術振興会に届け出ている研究機関からのみ,研究分担者としてすべての研究種目に参画することが可能となる.
国際共同研究強化(A)が「国際共同研究強化」に,国際共同研究強化(B)が海外連携研究と名称が変更される.
「科研費については研究活動の国際化等が求められて」いることから,令和6(2024)年度公募以降,「研究計画に関連した国際的な取組(国際共同研究の実施歴や海外機関での研究歴等)がある場合に,必要に応じて研究計画調書に記載できることを明確に」することとされている.
また,以下の内容が,令和5(2023)年度交付に当たって適用を予定している研究者使用ルールに追加される予定となっている.
「研究成果の国際発信」
研究代表者及び研究分担者は,補助事業の推進に当たり,国際学術誌への学術論文の発表,国際共著論文の執筆,国際会議等での発表等により研究成果の積極的な国際発信に努めなければならない.
令和5(2023)年度公募より,「支援対象者の要件の追加」と「計画調書の様式の見直し」が行われる.
「支援対象者の要件の追加」では「博士の学位取得後15年以下の者(産前・産後の休暇,育児休業の期間を除く)」が追加される.
「計画調書の様式の見直し」では「学部卒業以降の研究機関の移動経験の有無」の欄が追加される.
令和5(2023)年度に交付予定の機関において,使用ルールに「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成27年法律第64号)等の関係する法令等を遵守いただくとともに,男女共同参画等を推進するための取組に積極的に努めていただく旨を追記する予定」とされている.
上記の2項目は令和4(2022)年度からすでに適応されている.今一度,応募要項を読んで確認しておいてほしい.
※なお,研究インテグリティについては,過去の速報でも触れているので必要な方は参照してもらいたい.
大部分の応募予定者にとって,「公募スケジュールの変更」(すなわち具体的な公募開始予定日)が最も重要である.今日からでも,応募準備をはじめるのがよいだろう.