本コンテンツは,実験医学同名連載(2017年8月号〜)からの転載となります.バックナンバーのプレゼント応募は終了しておりますが,パズルのみお楽しみいただけるようになりました(本文の文章は掲載時のままになっております).
第53問のこたえ
先月号の『生命の謎を解け』は楽しんでいただけましたか.とりあえず,図式化されたものが何かということについては,皆さんは迷わなかったのではないでしょうか.全体は「DNAの二重らせん」をイメージしました.となると,4つあるものは塩基名であることが想像できます.どの枠がどの塩基に対応するのかという点は,中央の…が水素結合を表すことに気づけば,水素結合3本の上2つが「シトシン」「グアニン」,結合2本の下2つが「アデニン」「チミン」であることがわかります.最後に,数字の順に枠に文字を入れて,4つの枠を重ねると,枠内の9つの文字が判明し,それらを使って?の図式を読むと「デンシ」となります.先月号のテーマが「バイオDX」ということで,バイオデータの基本となる塩基情報を使って,電子(データ)を浮かび上がらせるように作ってみました.
2000年頃,僕の学生時代はようやくバイオインフォマティクス専業の研究者が少しずつ増えてきた時代です.当時の日本では,実験生物学を学んできた,いわゆるウェット出身の研究者が,自主的にプログラムなどを学び,ドライ研究も併用して行うようになり,さらにそのなかから,完全のドライ研究しか行わない研究者が生まれてきた流れがあると思います.一方,当時,アメリカのゲノムセンターに訪れることもあったのですが,そこでは,理論物理や計算機科学など,生物学系出身ではない研究者が多く参戦しており,少し驚いた記憶があります.ただし,生物学はあくまでウェット実験から得られた大量データを扱うという点を考えると,バイオインフォデータの真の活用をめざすのであれば,コンピュータや統計の専門知識をもつ必要があるのはもちろんですが,それらのデータがどのようなウェット研究から得られているのかといった知識を十分にもたなければ,全く筋違いの解析になってしまう難しさもあるでしょう.ともあれ,後世に検証可能な形でデータを積み上げていくという科学の重要な一面を考えると,それらの積み上げられたデータをいかに活用していくかは,いつの時代でも必ず取り組まれなければいけない課題だと思います.
今月はここまで,来月のパズルもお楽しみに!