本コンテンツは,実験医学同名連載(2017年8月号〜)からの転載となります.バックナンバーのプレゼント応募は終了しておりますが,パズルのみお楽しみいただけるようになりました(本文の文章は掲載時のままになっております).
第85問のこたえ
先月の『2つに分かれて』は楽しんでいただけましたか? すべてのピースを入れ終わっても空きマスができるところ,枠が2つに分かれているところが今までにはない問題になっていたと思いますが,パズルの中身としては,これまでさまざまなコンセプトを与えて出題してきた箱詰めパズルの一種になります.つまり,ピースを当てはめていって試行錯誤する,という当たり前の基本的な作業が,王道であり唯一の解き方ではあります.小さい方の赤い液滴と,大きい方の青い液滴を考えると,赤い液滴から入るピースを考えた方がよさそうに見えますが,実はDを青い液滴に入れると他のピースが入れられないことに気づくと,赤い液滴にDが入ることが決まり,そこからはスムーズに解けていくかと思います.最終的にすべてのピースを入れると解答図のようになり,青い液滴に入る『A・C・E』が答えとなります.
先月号の特集は,ストレス応答と液-液相分離(LLPS)がテーマでした.先月号のパズルはLLPSをコンセプトにパズルをつくりましたが,このLLPSは,僕の研究者時代には生物系の分野では聞くことがなかったように思えます.調べてみると,物理化学の分野では古くから知られていた現象ではありましたが,細胞内でのLLPSが注目されはじめたのは2010年前後ということで,分子生物学や細胞生物学にとっては非常に新しい視点でした.考えてみると,タンパク質が集まって機能するためには何らかの場が必要で,さらにドメインごとに多様な物性をもつのがタンパク質であり,そのなかに凝集を促進するような物性をもつドメインが含まれることを考えると,タンパク質が集まる場の本質はLLPSにあるという話も納得ではあります.古典的な生物学の教科書にも膜で覆われていない構造体としてさらっと紹介されている核小体も,LLPSによって形成されることがわかってきたとのことで,目から鱗の思いでした.まだまだこれから,大きな注目を浴びていく現象だと感じました.
今月はここまで,来月のパズルもお楽しみに!