本コンテンツは,実験医学同名連載(2017年8月号〜)からの転載となります.バックナンバーのプレゼント応募は終了しておりますが,パズルのみお楽しみいただけるようになりました(本文の文章は掲載時のままになっております).
第83問のこたえ
先月の『2細胞期胚』は楽しんでいただけましたか? これまで何度か書いているかと思いますが,出題の中に例題がある月のパズルは,まずは例題の問題と解答をよく眺めて,ルールの理解と,解き方の試行錯誤を行うことをお勧めします.例題を解いてみたうえで本問に取り組んでもらうと,最上段と2段目の右から3個目のマスのような小さいL字の壁があるマスには,必ず片方の細胞が配置されるということがわかります.3段目の一番右や,最下段の左から2番目のマスも同様です.これらを糸口に,ヒントの数字を合わせて考えていくと,使えない分割線の場所や,必ず使う分割線の場所がわかってきます.最終的には解答図のようにすべての2細胞期胚が配置されて,矢印の間の列に入る細胞の数『6』が答えとなります.
先月号の特集は,ヒト初期発生に挑む胚モデルがテーマでした.すべての動物における初期発生の最初の卵割をテーマにパズルに仕立てたわけでありますが,僕自身の研究テーマもホヤの初期発生で,まさに受精~8細胞期くらいまでの最初期の胚を扱っていました.ホヤ研究においては,時期さえ選べば受精卵は大量に得ることができるので,寒天シャーレ上にたくさんの2細胞期胚がある光景は常時目にしていました.また,先を細くひいたガラスの器具で2細胞期胚を操作し,今回のパズルの分割線のようにガラスを胚に押し当てて,左右の細胞を分けるといった作業も行うことがありました.パズルを作りながら,勝手にそれらの光景と重ね,少し懐かしく研究者時代に思いを巡らせていた次第です.ヒトの胚は技術的,倫理的問題から大量に扱うことは難しいのですが,特集で紹介された多能性幹細胞を用いた胚モデル研究の発展により,ヒトの初期発生の秘密が少しずつ明らかになっていくのを楽しみにしています.
今月はここまで,来月のパズルもお楽しみに!