本コンテンツは,実験医学同名連載(2017年8月号〜)からの転載となります.バックナンバーのプレゼント応募は終了しておりますが,パズルのみお楽しみいただけるようになりました(本文の文章は掲載時のままになっております).
第54問のこたえ
先月号の「抗体をつくれ!」は楽しんでいただけましたか? 最初は解く手がかりがわかりにくかったかと思いますが,試行錯誤していくうちに,効率よく当てはめていくには,3マスを占めるブロックの入る位置を探っていくのが近道だということに気づくと思います.あとは順々にピースを組合わせてはめていくと,6つのブロックがすべてはまる「AとD」が答えになります.
先月号の特集テーマが「夜明けを迎えたヒト免疫学」ということで,免疫機構の根幹をイメージしてパズルにしました.遺伝子を再構成することで抗体の多様性を実現させるというメカニズムです.以前,2018年の8月号に僕の学生時代の思い出として「抗体の多様性を生み出すメカニズムが,ちょっとパズルっぽく感じた」と書いたのですが,本パズルは学生の頃のその思いを,20年越しで形にしたことになります.1,000個ほどの遺伝子が組換えを起こすことで,100億種類以上の抗体をつくり出すしくみは,生物が進化のうえで獲得していった驚異の仕掛けの1つであり,「抗体の多様性を生み出す遺伝的原理の発見」により,利根川進さんが1987年に日本人初のノーベル生理学・医学賞を受賞したのはみなさんもご存じのことと思います.本パズルでは,可変領域部を構成するのは,H鎖がVDJから,L鎖がVJからの計5領域であること,また各領域内で 1つずつ遺伝子が選ばれて組換えが起きることから各領域間でのピース交換はあり得ないことなど,実際のメカニズムとは違う部分も多くあります.しかし,それほど種類数の多くないピースでも,組合わせることで多様な抗体をつくり出せることを理解し,試行錯誤のなかで生命が抗原を認識する抗体を探しだす過程などを感じてもらえたら本望です.
今月はここまで,来月のパズルもお楽しみに!