本コンテンツは,実験医学同名連載(2017年8月号〜)からの転載となります.バックナンバーのプレゼント応募は終了しておりますが,パズルのみお楽しみいただけるようになりました(本文の文章は掲載時のままになっております).
第50問のこたえ
先月号の『立体のパズル』は難問だったのではないでしょうか?先月号の特集テーマが「空間トランスクリプトーム」ということで,本連載では初の立体パズルを出題しました.これまでの「割れた」シリーズと同様,1ピース余るものを見つける問題ですが,平面では慣れてきたという方でも,立体となると誌面に書き込むこともできないので,一筋縄ではいかなかったのではないでしょうか.特に,Eのようなピースを頭の中だけで回転させてうまくはまるかどうか判断をするのは,パズルに慣れている人でもたいへんです.サイコロ状のブロックをくっつけて,実際にピースをつくって解くのが一番確実かもしれません.いろいろ試してもらうと,A・B・C・Eの4ピースを組合わせると完成図の立体をつくることができますので,答えは『D』となります.
僕の性なのか,大量解析とか網羅的とか聞くと,なんだか楽しい気分になってきます.しかし同時に,研究者時代の苦労も思い出されます.遺伝子発現にしても,タンパク質発現にしても,胚や組織の顕微鏡写真についても,解析機器やデジタル撮影技術の進歩で大量のデータを簡単に集められるといったふうに思われがちなのですが,実際は,質の高いデータを大量に集めるのはかなりたいへんなことです.最終的に測定をする機器がいくら進歩しようと,ちょっとしたピペット操作だったり,サンプル調製の手順だったり,本当に基本的な部分が,最終的に得られるデータの質に大きく影響を与えることが多いです.大量にデータをとってみたものの,どうももとのサンプルが悪かったようで,せっかく集めたデータが全く使えないことが判明して徒労感を感じるのは,研究者あるあるではないでしょうか.もっとも,質の高い大量のデータを集めることに成功して,それらを眺めているときに,おぼろげながら生命現象の全体像や本質のようなものが何か見えてくるときのワクワク感で,その徒労感は吹っ飛ぶのですが.
今月はここまで,来月のパズルもお楽しみに!